当社のダビングサービスは後発ながら、字幕制作等で培ってきた技術力で、刻一刻と劣化が進むビデオテープや8ミリビデオ、DVテープなどのアナログ媒体からデジタル変換を高品質で提供するダビングサービスを今秋、開始しました。
20年の歴史がある当社ですが、「字幕制作」というとザックリとした内容しか思い浮かばない人も多いかと思います。
そこで疑問に思うのが「映画公論社って何をしている会社だろう?」ということですよね。
この記事は当社が提供するサービスとは直接関係しませんが、当社のことを紹介しつつ、皆さんに楽しんでいる記事を散発的に更新していこうというモチベーションのもと書かれたものです。
さて字幕の制作…といえば、映画やドラマの字幕が真っ先に思い浮かびますよね。
当社では単館上映の映画をはじめ、アメリカや韓国のドラマ、難聴者用字幕などその制作実績は数知れません。
韓国ドラマブームの火付け役となったあの某有名ドラマにも関わっていたりします(皆さんも聞いたことがあるタイトルです(^_^))。
そして字幕制作の花形のお仕事といえば「翻訳」です。
翻訳とは「ある言語で表された文章を他の言語に置き換えて表すこと。また、その文章」(by デジタル大辞泉)ということですが
その翻訳という作業に関連付けて、今回は1本の映画を紹介したいと思います。
「ビューティフル・マインド」という、ラッセル・クロウ主演で2001年にアメリカで公開された映画です(注:当社が制作に関わったわけではありません)。
ざっと内容を説明すると、天才と言われる数学者ジョン・ナッシュ(ラッセル・クロウ)は、統合失調症による幻覚に苦しみながらも妻の献身的な支えのもと病気と闘い続け、晩年にはノーベル賞を受賞する… という実話を基にしたストーリーです。
さて、ここで唐突ですが問題です。
映画のクライマックス、ノーベル賞授賞式展でのスピーチ。
壇上でジョンは自分を支えてくれた妻へ感謝の言葉を述べています。
長年の苦労を思い出して感極まる中、ひと言、ひと言、絞り出すように話し続けるジョン。
そして最後にこう言います。
「You are all my reasons.」
あなたなら、このセリフを一体どんな日本語に翻訳しますか?
「You are all my reasons.」
簡単な英語なのでニュアンスは何となく分かりますよね。
直訳だと「君は私の理由の全てだ」ぐらいでしょうか。
セリフは1〜2秒もないぐらいなので、
字幕として読み切れる量としては最大でも8〜9文字ぐらいです。
(字幕翻訳の基本的なルールとして、日本人が1秒に読み切れる標準的な文字数は4〜5文字というのがあります)
この条件の中で、この場面にふさわしいセリフ、あなたならどんなセリフが思い浮かびますか?
私はこの字幕の日本語訳を見た時、「あっ すごいな。自分にはこんな言葉はとても出ない」と単純に思いました。
決して難しい言い回しではありませんが、見事にこれまでのストーリーを
この1つのセリフで言い表してるじゃないかと感じました。
それでは答え合わせです。
「君がいて 私がある」
私が観た字幕版ではこのような翻訳になっていました。
ここからは更に勝手な解釈が続きますがご理解のほどを。
私がこの字幕で感じたのは「時間の流れと重み」です。
映画を観れば分かりますが、病気の夫を支えるというのは並大抵のことではなく、しかも精神的な病です。
病気の本人にも、それを支える人間にも、何もかもを投げ出したい瞬間はあります。
そのマイナスの部分も抱えながらも「今の私がいるのは、支えてくれた君がいたからだ」と言っています。
映画の中で主人公のジョンがテーマにしているのが「この世の全てを支配できる理論を見つけ出したい」ということ。
人生をほぼ全て費やしてにたどり着いた理論が、これだったのではないかと思うのです。
「私がある」という言い回しが、なんとなく理屈っぽいのがミソです。
ということで長々と書き綴りましたが、映画のラストにくるキメのセリフの重み、感じていただけたでしょうか。
私の記憶が正しければですが、この字幕版を担当したのは戸田奈津子さんでした。
業界では一番の有名人ですがこの方の人生の経験があってからこその言葉だったのではないかと勝手に思っています。
この言葉はひねり出したものなのか、それともさらっと思いついたものなのか、
いつかご本人に聞いてみたいなと思ったり思わなかったり。。。
最後についでですが、当時の翻訳作業の環境ではまだまだビデオテープを使っていたのではないかと想像します。ビデオデッキでテープを再生しながら、ストップウォッチ片手にセリフの長さを測り、大体の文字数を決める…
とてつもなく気が遠くなる作業です。
今ではDVDやBlu-rayだったり、MPEGやMOVなどのデータをもとに作業しているので、その点でもだいぶ楽になりました。
そして冒頭の会社紹介に戻りますが、そんなビデオテープはもはや絶滅危惧種です。
結婚式や運動会など思い出の場面が記録されたテープ類は刻一刻と再生環境が失われつつあります。
皆さんもVHSビデオテープや8ミリビデオテープ、DVテープなどお持ちでしたら、この機会に是非、当社のダビングサービスをご検討くださいませ。
それでは、お読みいただきありがとうございました。